砂漠 ・4・



 黒い鎧のナビが、赤い腕の剣を振る。 
 袈裟懸けに振り下ろされる、が、ゾアノロイドは、地面を滑るように避ける。

 しかし、ゾアノロイドの僅かに反った体の隙を見逃さなかったらしい黒い鎧のナビは、剣の切っ先で開いた脇を微かに裂く。口のない仮面の顔が僅かに痛みに歪む。
 異様に長い腕を、キャノンに変え、エネルギー弾を黒い鎧ナビに放つ、炸裂弾のように細かい球が飛ぶタイプらしい(だから、さっき放ったチャージショットは慣れてなくて外したのかな)。
 けど、黒い鎧ナビはその伸ばしきってしまった長い腕に潜り込む、リーチがあるのはよいことかも知れないけれど、逆に懐に潜り込まれては、撃つに撃てない。

 ゾアノロイドは、素早く、蹴りを入れるその反動で、一気に黒い鎧のナビの間合いから抜ける。 


 ゾアノロイドは、残った片方の腕をまるでランス(槍)のように、変形させる、炸裂型のキャノンでは確実には当てられないと判断したらしい(やっぱりチャージショットは苦手らしい)。

 薙ぐことに特化した黒い鎧のナビと、突くことに特化したゾアノロイドでは、非常に相性が悪いらしい、なかなか決まらない。
 
 黒い鎧のナビは、表情は変わらないが、どうやら表情豊かなゾアノロイドは憎らしげに顔色に変える。 

 「全く持って、不快…!」

 だんっと、砂の大地を力強く蹴り、黒い鎧のナビは大きく斬りかかるとするが、ゾアノロイドは、腕のランスの地面に突き刺し、それを軸にして体を曲げ(人間じゃあり得ないぐらい曲がった)、サーベルに蹴りを入れ、切っ先を逸らす。

 僅かにバランスを崩した体を、ゾアノロイドは容赦なく穿たんと、ランスを引き抜き、大きく突き出す。

 しかし、黒い鎧のナビは、その穿ちを避けるどころか、向かっていった。

 「…っ…!」

 ゾアノロイドも、此には意表を突かれたらしい、僅かに顔が驚きを見せるが、その突きは揺るがない。
 その、強い突きにたいし、黒い鎧のナビは何も恐れることなく、唯目的を、消すことのみに従事した動きで、体勢を直し、サーベルを振る、黒い鎧の体でゾアノロイドが隠れた。

 僕は、ゾアノロイドのランスが、黒い鎧のナビを貫くと、思った。



 そして、浅葱色のマントから、ランスが生えた。

 僕は、咽がひくりと鳴った。
 黒い鎧のナビが、ランスに貫かれた、その事実に唯でさえ、冷えていたからだが凍る。 
 一瞬後、マントの貫かれた部分から、淡いデータの粒子を散らした。


 デリートされた、、、っ!?


 僕は、そう思い、思わず男の人に目を向ける。
 けど男の人は、全く揺るがない、目の前の的にのみ集中している。自分のナビがもしかしたらデリートされるかも知れないこの状況で、視界の隅には入っているだろうに。


 何故、、、?


 僕が、その疑問を形に変える前に。

 「ぁっ!ぎゃあぁあああぁあああぁぁああああっつ!!!」

 ゾアノロイドが、激痛に反応する絶叫を上げた(無駄に響く声だから耳にきぃいんってきたよ、、、)。
 デリートされ半分破れたような状態になったマントから、見事に、黒い鎧のナビのサーベルが、ゾアノロイドの、右のお腹の下の部分をえぐっていたのが見えた。

 男の人に再び目を向ける、男の人は相変わらず、揺るがなく戦っている。

 僕は、こんな状況なのに、ああと、納得した。



 この人は、、、知っているのだ。
 この黒い鎧のナビを。
 簡単にデリートされたりしない、この強さを。



 だから、慌てず、揺るがず、自分の戦いのみに集中できるんだと。



 黒い鎧のナビは、そのまま、ゾアノロイドに刺したサーベルを上に切り上げる。

 「ごおぉ…っ、ごぉおおぉ!!ぉおおおおおぉおおおぉおお!!!!」

 悲鳴とも、咆哮とも突かない声を上げるそのゾアノロイドの右上半身を、そのまま、体から切り離した。

 切り離された右上半身は、その勢いで宙を、死にかけた昆虫のように動きながら舞う。
 そして、地面に落ちる前に、データの粒子になって消えた。

 僕は、思わず目を向けていた切り離されたそれから、本体に目を戻す。
 さすがに右上半身という、体の半分ほどを切り離されたら、さすがにゾアノロイドでもデリートかなと、と思ったけれど。

 僕は、自分の甘さを痛感した。



 動い、、、て、、、る、、、?。



 ゾアノロイドは、倒れかけた体を無理起こした。

 がくりがくりと、痙攣しながら自分の体を撫で、ひぃいと、酷く滑舌が悪い引きつったような声を上げた、そして一瞬後に仮面のような顔が、ぼとりと、半分落ちた。


 「こノ…ニンゲん…風ゥ情ィニィイ…ニ…使わレル…低ィ俗ナァア…モの…にぃいィイいっつ…!」


 欠損した部分が多かったせいか、酷く滑舌の悪いようなしゃべり方へとなった。
 それがかえって、僕にはいっそう不気味に見えた。

 そして、そんな僕の考えを感じ取ったかのように、地面に落ちた半分の顔の目がぎょろぎょろと辺りを見渡し始めた。一つしかない目が狂ったようにあっちこっちに向いているのだ。

 「ひっ…!」

 その気持ち悪さに僕は、思わず声を上げてしまった。


 ぎょろりっ。


 目が、僕を見た。


 「ぁっ…ああ…あぁぁああっ…」

 情けなく震える声が漏れる。



 その地面に落ちている顔が、その目が、僕を写す。
 そして、半分の顔でにやりと笑うと役目を終えたかのようにデータの粒子になって一気に消えた。


 「良ィ…獲ェ物ガ…残っテいたカ…。」


 ざぐりと、わざと音を立てるようにゾアノロイド本体が向く。
 だが、黒い鎧のナビが、また向かってきたのに素早く反応し、残ったランスで受け流す、そして、黒い鎧のナビに視線を向けるその一秒にも満たない間に、僕に視線を投げた。

 酷く嫌なモノを込めた視線を。


 心臓が痛いぐらい無茶苦茶に動き出した。



 どうしよう、、、どうしよう、、、!どうしようっつ!!



 その僕に気が付いたのか、ウィルスを打ちのめす男の人の鋭い怒声が響く。


 「何をボサッとしている!!逃げろ!!少しでも遠くに!!」


 あまりの渇に固まっていたからだが溶ける。
 僕は、渾身の力で、妹の体をしっかりと掴み逃げる。

 本当に、いつもは何で出ないんだろうと思うほどの力だ。



 僕は、力のない自分がすっごく嫌になった。



 分かっていたけど、迷惑になるって事ぐらい。
 すっごく怖いって事も、分かってた、けど、見てみたかった。

 僕が見たこともない人を、僕が知らなかった事を。

 だからこそ、自覚していたからこそ、悔しくて、空しくて、情けない。

 こんな僕が。



 ぎりぃぃいと、歯を食いしばる。


 そうじゃないと、泣きそうになる。


 「ぅう…ぅうううぅううっつ…」


 まだ泣いてはいないけど、僕の声はもう泣いていた。
 泣いてなんかいられないのに、、、。


 その時、僕の体が一気に後ろに引っ張れ、思わず妹の体を離してしまった。
 一瞬何でからだが後ろに引っ張られたか分からなくて、思考がパニックになるが、胸を押されるような苦しさに胸元を見て異様に長い腕が僕の体を無理捕まえたことが分かった。


 「…ぅっわぁっあぁぁああぁぁああっ!!」

 「捕マ…えタぞォっつ…!」 


 そう、酷く聞き取りづらい声と、半分しかない顔が、間近にあった。
 一個しかない、目が三日月型に歪んだ。



 どう、、、して、、、?



 黒い鎧のナビがあれだけ押していたのに、どうやって、、、?
 僕は、足下を見て、このゾアノロイドのがどうして離れていた此処まで一気に来たのか分かった。

 さっきまでの細くまっすぐ伸びていた足が、チーターとか足の速い動物のようなそれになっていたのだから。 



 獣化、、、している、、、。



 そして、背中に当たるゾアノロイドの硬い装甲が変わり歪む感触がごきりごきりと伝わってくる。


 なんて、、、気持ち悪い、、、!!


 僕の体を掴む腕と、間近にある顔が一気に変わってゆく(どうやらこのゾアノロイドは、とても獣化するのが早いタイプらしい、遅いヤツはとっても遅い)。

 さすがに、半分になった体は獣化しても無理だったらしいけど、残った体は充分に獣化した特有のそれへと変わっていた。

 間近にある半分しかない顔が、オオカミような面差しに変わってしまったけど、半分しかないせいか引きつって、出来損ないのピエロみたいになって、掴む腕は、猫科動物みたいな曲がった長い爪がつぎはぎみたいな腕に、ヘッタクソな工作のロボットみたいに、生えているというより無理矢理くっついているような感じだ。

 ぎちっと、尖った硬い装甲がお腹に食い込んで痛い。


 「どぅダ…?ニんげンにツかェルキぃいさまナぁらァ…コぉれデェ…こゥゲキィできィマぃ…」


 獣化の影響で声は歪むようなノイズが混じり、もう、殆ど聞き取ることが困難なぐらいだ。

 無駄に良い声だったせいか、此処まで歪むと聴くに堪えない。

 耳元でしゃべられてる僕はぎりぎり聞き取れるけど、これはもうある程度離れたら何を言ってるんだか分からないぐらいになってるんじゃないかな?(多分唸ってるようにしか聞こえないと思う)


 因みにこんなのんきに考えを巡らせる僕は、唐突な恐怖の絶頂に、まともな恐怖に当たる思考が追いつかないからだ。


 「は、はな…せ…っ」
 「ソレぇでもぉ…イぃがァ…?」


 ぎょろっと、目が地面に横たわる妹を指す。
 僕の変わりに妹でいいならと、言わんばかりだ。

 にぃいと、口角が人間でうう耳元当たりまで上がる(仮面みたいなのっぺりした顔だったに、口が出来ている!)。


 「コレでェ…ワタしぃノ…カちだ…っ!」

 
 実に、単純な作戦だ、けど誰もが考えつく作戦だろう。
 基本的な知識だけど、ナビは人間に危害を与えれないようにプログラムされているから、人間が居る場合攻撃は出来ない。
 だから、だいたいのレジスタンスのナビ達とゾアノロイドが戦う際、ゾアノロイドは人間を人質にとって、危ない状態になることが多いらしい。

 けど、黒い鎧のナビにそんなのは通じない、、、!


 「ナぁあァ…っつ!?」


 赤い腕を、振りかざし、猛然と斬りかかった。


 「くゥ!?…」


 ゾアノロイドは驚いたように、僕を抱えたまま後退する(苦し!)、でも、さすがに獣化しただけあって足がうんっと早くなってる。


 「なゼエだァあ…!?」


 このゾアノロイドは知らないんだ、この黒い鎧のナビが、軍事ナビで。リミッターを外されてるって事に。

 漸く僕の思考が、まともな恐怖の思考になった。


 「ぅ、うわぁああぁああぁあぁぁああ!!!!!!」
 「クっ、ァばレルなっ。」


 めきぃぃいと、肋骨が軋むほど腕に力が込められる。


 「ぁぐぅっ!!」


 一瞬、あまりの痛みと、苦しさに意識がブラックアウトする。
 けど、それを更に上回る苦しさで、また意識が戻る。

 そして僕の本当に目の前で、鋭い線がおりる。
 当たりはしなかったけど、あまりの鋭さに本気で、僕が一緒だろうと斬るという事に迷いがないのが分かる。


 痛い、、、苦しい、、、怖い!!


 正直、ゾアノロイドより、僕は、黒い鎧のナビの方が怖かった。
 何もない、感情のない空っぽの目が唯標的として僕も一緒に見ていることが。


 「手を出すな!!退け!」


 その時、男の人の激しい声が飛ぶ。
 黒い鎧のナビは、指示通り、一気に退き、男の人の所まで行く。


 「人質が居るんだぞ!うかつに手を出すな!!」
 「了解。」


 男の人の命令に従う。

 悔しそうに、顔を顰める男の人と、無表情に構える黒い鎧のナビは実に対照的だ。

 僕はとても、申し訳ない気分になった。
 邪魔なんてなりたくなかったのに、、、。

 言われた通り逃げれば良かったのだ、、、僕の我が儘が、あの人に迷惑をこんな形でかけてしまった。


 「ごめんな…さ…い。」


 それしか、今は言えない、、、。
 絶対に、怒ってるよね、、、。


 けど、男の人は、険しい顔だったけど、僅かに口が微笑む。
 そして、空っぽじゃない、温かな目が、僕に向けられる。


 「大丈夫だ。



 たった一言、それだけだったのに。



 なんとも言えない気持ちが湧いてきた。


 「いいか、決して人質を救い出すことが第一だ。それまで下手に手を出すな。」
 「了解。」


 気合いを入れるように、びゅぅんと、鞭を振る。
 ウィルスは、もう疎らなぐらいに減っていた(どれだけ強いんだろう、、、)。

 けど、もうゾアノロイドにはそんなことどうでもいいらしい。
 僕を捕まえたことで、どうやら自分が有利になったことを悟ったらしい。


 「ォもしろィコとヲぃぅなァ…このコドもぉがァ…どゥナッテもィいのカァ?」
 「ぐぅ!」


 めしりと、更に力がこもる。
 尖った装甲が食い込む、息苦しいし、なにより痛い(もう少し力が込められたら尖ったトコが刺さる、、、)、だぼだぼで、古い服だと、それが更にプラスされる。


 「ドゥしタ?コどもォ、サキぃほどノよゥに、ァばれナイノかぁ?」
 「…。」


 暴れたいし、悲鳴を上げて無茶苦茶になりそうだ。けど、暴れたら装甲が食い込んで怪我するし、悲鳴を上げたら此奴の思うつぼだ。
 痛いぐらい歯を食いしばって感情を押し殺す。


 「カわィゲなィ…コだなァ…。」


 お前なんかに気に入られても嬉しくない。


 その言葉は、押し殺してる感情とともに飲み込む。
 一部のゾアノロイドは、人間を飼うという変わった趣向のヤツもいるけど、此奴もその類?(だったら、かなりキモイよ、、、)。

 そんな、事を考えると、別の意味で、気持ち悪くなる(生理的に、何?だったら僕は可愛くないよ、しかも女の子じゃないぞ!)。


 男の人と、黒い鎧のナビが二手に分かれた。


 ゾアノロイドは少々焦ったようだ、一個しかない目じゃ、左側しか見えないだろうし、残った腕は僕を掴むことにいっぱいいっぱいだ。

 黒い鎧のナビが向かってくる赤い腕は、サーベルから元の手になっている、肉弾戦というわけだろうか?

 「ガっ!」
 「……!!」

 剣ではなく、今度は、拳が襲ってくる。

 ゾアノロイドは、僕を抱いたまま、その激しい拳を蹴りの要領で受け流す(このゾアノロイドは特に足が強化されてるのかな?)。

 そして地面を蹴り、回し蹴りで黒い鎧のナビの装甲のないお腹の横を蹴る、さすがにコレには、黒い鎧のナビも少しよろけたが、踏ん張る。
 お返しとばかりに、黒い鎧のナビも長い足を生かして軸足を蹴り飛ばし、不安定になったゾアノロイドの体の、今は死角となった右側にタックルを喰らわせる。
 ゾアノロイドは、完全に体勢を崩し隙だらけになり、とどめとばかりに拳を握りゾアノロイドの急所を狙う。

 が、ゾアノロイドは、僕を抱く状態から、掴むように持ち盾にした(うぅわっぁあ!?)。
 ぴたりと、黒い鎧のナビが拳を止める。

 命令された通りに従ったようだ。そして、その隙を狙われないように、どちらも一気に後方へ退く。

 そして、ゾアノロイドが、勢いを付けて向かった。
 黒い鎧のナビは、それに構える。

 かなり勢いを付けて、蹴り込む。
 けど、黒い鎧のナビは、その伸ばしきった足を、あっさりと掴み(それはもう、がっちりと)。

 そして、そのまま、ゾアノロイドはバランスを崩す。


 「ォおおオオぉぉっ!!」
 「ふぅっ!」 


 地面にそのまま叩き付けようとする(ちょ!僕も一緒!?)。

 けど、ゾアノロイドは残った足で掴む腕を、蹴る。
 僅かに、黒い鎧のナビの腕のデータが飛散する。

 それの、僅かな傷をえぐるようにまた蹴りを食らわし、傷を深くする。

 それでも離さない、痛みがないのか



 ごがぁあっつ。


 もう片方の方の拳で、欠けた顔の部分を殴る。

 僕の目の前でデータがざらりと崩れた、半分しかない顔が更に削られたみたいで、結構痛かったらしい、激痛の絶叫をかみ殺し、ゾアノロイドは、怒りを込めた感じで力を込めて思いっきり、腕の傷に再び蹴りを食らわせた。


 がしゃんっつ。


 ガラスのような硬い物を破るような音とともに、今度は貫通した。

 その衝撃で、力がゆるんだのか、人間で言う、神経でも傷づけたのか、そのまま、掴まれた足を引き抜く、宙に浮いた状態になり、抱いていた僕を、一瞬僕が、腕から抜ける。


 「タィしたことナ…。」
 「はぁああ!!」


 いつの間にか、後ろに回っていた男の人の鞭が器用に僕の足にからみつけた。
 びっくりしたけど、、、。


 何というか、魚を釣るような要領で(、、、ちょっと、、、)僕を助けようとしたらしい。
 けど、無駄に長い腕が、ひっぱられ宙で僅かに離れた僕の、服を掴んだ(苦しい!)。

 長い腕でそのまま、僕を持ち上げる(足が引っ張られ、上着が引っ張られ、これって痛苦し、、、!)。


 「コンな、たんジュんな、さくゥかぁ?」


 一瞬、男の人は、すっごく残念そうな顔をしたけど、ん?っと、何かに気付いたようだ。


 「…それは、どうかな…?…物事をちょっと硬く考えすぎじゃないか…?物事って言うのは、柔らかな思考でするものだぞ…?」
 「ンん?ナニをぃッテいるゥウ?」

 「おい!君!!」
 「はひぃい!」


 苦しいのせいか、変な声で返事をしちゃった、、、。
 けど、何だろうと、思わず意気込む。


 「手を挙げろ。」
 

 、、、?、、、手?


 突然に何を言うんだろうと思った。


 「ハハぁァアははハハ!!キィでもクルったかぁ?キィさまぁ?」


 ゾアノロイドが面白げに、笑う。


 「いいから!高く手を上げろ!!出来るだけまっすぐな。」


 ?????
 意味が分からない、、、こんな状況で?


 「早く!」


 足を引っ張る強さが増す(痛いんですけど、、、)、僕は、やけくそで手を挙げる。


 「ぇい!!」


 そして、するうぅうと、一気に下に引っ張れた。


 「はぃ?」


 思考をあまりのことでとまり、本当に、ぽすりと、男の人の腕に落ちて自分がどうなっているのか理解した。
 ゾアノロイドも、突然自分の手に残された僕の服を見て驚いたように呆けている。


 「どうだ?物事は柔軟にってな。」


 にっと、気持ちの良い笑みを浮かべた。
 僕は、自分のサイズよりかずっと大きい服を着ていて、だぶだぶだったのだ、まあ、後は簡単だ。


 「ふ、随分とご親切だな、もしお前がこの子の上着を掴んでなかったらこの子を助けられなかった」


 運がいいな君は、と、くしゃりと、僕の頭を撫でる(ちょっと、恥ずかしい)、そして、人の悪い笑みを浮かべる。
 その人の悪笑みに、憎々しげに顔をゆがめる。
 
 そして、力任せに僕の服を唯の布きれへと変える(あ〜あ、、、)。


 「ふ、フゥざケタぁまねェヲォオ!!!」


 コケにされて、かなり怒ったらしい、完全に男の人だけに意識を向けている。

 その後ろを、黒い鎧のナビが的確に狙った。
 ゾアノロイドは、気付くがもう遅かった。

 赤い腕を、剣に変え、その剣が。


 「ガ、ア、ぁ、ァ、あアぁァ、アアアぁぁああアァあァアアアああっつ!!!」


 耳障りな絶叫とともに、ゾアノロイドの胸から生えた。