思い立つ日が吉日 ・2



 景色がどんどん流れていく。
 目がとしてそれらを認識する前に、あたしの愛車のスピードはそれを許さない。

 限られたメットの見える景色にけちを付ける気はない、あたしは、絶景と評される処の絵や写真の類を見せられても、感動どころか、ただ、ふーんと思うだけという、それらを愛する人間からすれば、無感動なヤツと呆れられるような類の人間なのだから(あたしは何処に感動するのか解らない、まだ、全額連れの男持ちで、店で色とりどりの服や化粧品を見ている方が楽しい)。


 暫く、何も考えずに愛車を走らせ、目的地に着く。


 目的地なんて言うと、なにやら堅苦しく聞こえるが、唯の花屋だ。 


 硝子張りのドアを開け、中にはいると、ちんけな作業着をきた花屋の女と、その肩当たりでなにやら作業をしていた、その女のと思わしいナビ(草属性に間違いない、だってまんま草花を纏ったような外見だし)があたしを見て馬鹿のような顔をしていた。
 どうした?

 客が珍しいわけでもあるまいし、、、。


 ん?なんだって?
 爆音轟かせて、リッター車(1000ccを越えるバイクをそう呼ぶらしい)で、突然店前に現れたら普通の感覚のものならば、驚かぬ方が少ないだろうって?

 あっそ。


 アタシがメットを取と、花屋の女とナビは更に驚いた顔をする、男とでも思ったのか。全く、バイクに乗る奴=男とでも思ってるのか?典型的な男女に関する決めつけがある思考だな。今時、、、。
 ナビの方も似たような顔して、、、。
 あー。馬鹿丸出し、、、。


 「おい、そこのお前。」


 きょろきょろと、女はあたりを見回す、馬鹿か?こいつ?


 「お前だ。花屋のお前。」
 「は、はい…!」


 女は、漸く自分が呼ばれたを認めたららしい。


 「な…何のご用ですか…。」


 何おどおどしてるんだが、あたしは刃物を突きつけに来た強盗か?

 似たようなものだ、だと?
 何処が?
 こんな美人に、、、。


 「花を買いに来たに決まっているだろうが。」


 それ以外の目的が、花屋にある分けないだろうが。
 何故か、それを聴くと、女は酷く安心したように胸をなで下ろす。この女、本当にあたしのこと何だと思ったんだ。

 まだ、驚き顔のナビを後目に、女は、おどおどしていた顔を素早く営業用スマイルへ切り替える(この間、0.13秒、凄いね)。

 ふむ。いい商売根性してる(同じ、店持ちとして賞賛する)。


 、、、ん?ああ、改めて人間って現金な生物だって?

 そうだよ、人間って現金なものだよ。そこくらいの根性がないヤツはやっていけない、所詮弱肉強食の時代だよ(正直者が馬鹿を見る世の中とも言うが、、、)。
 あたしはその中で最高レベルと自負している。

 
 「どのような花をお求めでしょうか
。」
 「なんでもいい。適当に花を包んでくれ。」
 「適当にと言われましても…。」
 「面倒だな…、おまかせとやらは無いのか?」
 「それでよろしいのでしょうか…?」
 「ああ。早くしてくれ、別に何でも良いんだ。」


 女は、いそいそと花を包み始める。

 その間あたしは、青臭い店内を目で追う。
 どうも、あたしは花は好きになれない、青臭いのが何よりだが(あたしが野菜が嫌いな理由の一つ)、逆に、匂いを売りにしている花も甘ったるくて吐き気がする。

 花の匂いは全て香しいと賞賛する輩が居るが、花の匂いだって千差万別だろうに、、、更に言うと花の匂いを絶対とする女は更に質が悪い、、、香水でも被ったのかと思うほど、馬鹿みたいに付ける。思わず蹴り飛ばしたくなる。

 あたしは、無臭の方がいいから、あんまり付けないけど(どうしても酒の匂いとか消えないときとかに付ける)、あたしが唯一認めるパフューマー(あの調香もう天才だね、あたしが香水と認識して、自分に付けていいと思う代物はあの人が造るやつ限定、他はどんなことがあっても付けようと思わない)がつくるあたしのだけの香水は、オゾン。

 ちなみに、アニマリックは無理、なんか生理的に無理。

 あー、香水と言えば、、、自分の好きな匂いをプレゼントしてくる男。あれ、ヤダ、一種無神経。匂いとかは、個人の好み、なんか、自分の好みを押しつけられるようで、あたしは嫌い。
 あれだ。深層心理的にそう言う自分の好みを相手に送るヤツは、相手に対する支配欲が強いヤツだと睨んでいる(服とかそういう身につけるものを贈る男もそんなもん)。そんな奴はソッコーで別れる。


 そんなことを考えていると、在るはずのない匂いが立ち込めているような気がして、思わず匂いをどけるように手を振る。

 その時肘の当たりに、背の高い花が当たる、デカイ花だと思った。
 綺麗とは思わない。ただ、デカイ花だと思うだけ。

 あたしは解らない、ナチュラリストが聴いたらさぞかし非難されるだろうが、自分を飾り立てる化粧品や、ジュエリーは美しいと思う、、、だが、花の何が美しいのだろう?

 匂いはさておき、花自身を美しいと感じる感性はあたしには、あいにく無い。


 何か花に、此と言った傑出しているものをあたしは感じられないのだ。

 色が?なら、マスカラでもルージュだって負けていない。
 形が?なら、ブリリアントカットでもステップカットでもある。


 、、、それともその儚さが?


 儚さを美しさとは、あたしは思わない。
 死んだら、終わり。
 何も残らないことが美しいのなら、無が美しいのか?

 そんなの絶対あたしには理解できない、理解しようとも思わない。


 そんな花を冒涜するとしか思えない思考を持つあたしが、今、花を買う理由は簡単だ。
 建前とでも、格好付けとでも言うところ。


 墓に行くとき手ぶらとはどうも格好が付かないからだ。


 酒でも良かったかと思ったが、ナビに止められた。

 耐えきれずに飲む可能性がある、花にしろと。

 100%否定できない自分が居て、渋々その提案を受け入れた。
 まあ、そんなに高い代物ではないから良いが、、、。


 はぁ、、、昨日男から貰った花束一応持って帰れば良かった、、、(酔ってて覚えてないが、毒舌曰く、河に捨てらしい、全然覚えてない)。
 捨てなければ良かったと、後悔しても遅い。

 あたしは、殆ど自分の欲望のままというか、思いつきで行動しているタイプの人間だ。 
 言い換えれば、計画性がない。次の日の予定なんて立てたこともない。

 スケジュール表なんて生まれてこのかた買った覚えがない。

 例え、買ったとしても三日坊主どころか、買ったその瞬間から二度と開くことはないだろうと思う。


 今日墓参りに行こうと思ったのは、本当に思いつき。


 別に今日が、特別な日というわけではないのだ。
 あたしの野生の勘とも言うべきものが、朝歯を磨いているときに今日と、指したのだ。
 だから今日。


 「花、、、此でよろしかったでしょうか。

 「ああ。」


 何というか、良くも悪くもない、個性も何もない。
 花束と言われて、大多数が思い浮かべるぱっと思い浮かぶイメージのような花束だった。

 まあ、花束のセンスなんかどうでもいい。
 唯本当に、花束を買い来ただけだから。


 「あの…。」
 「ん、ぁあ?代金か。」


 花束を受け取り、PETの電子マネーでさっと払うと、さっさと店から出ていった。
 女とナビが後ろで、律儀にも、またのご来店などと言ってるのが聞こえたが、振り返る必要などないから振り向かなかった。


 メットを振り、バイクに跨ると、タイミング見計らったかのように、静かだったあたしのナビが話しかけてきた(珍しく、フォログラムとして出てきたが、メット被ったせいかちっとばかし聞き取り辛い)。


 ん?
 お前花屋では随分静かだったくせに、なんだ?
 あたしが花に埋もれてるおぞましい光景を見たくなかったからってか?
 どういう意味だ。

 人間のくせに自然物が此処までに合わない人間は珍しくて、お前の存在はそれらを冒涜する?

 そーかそーか。否定はせん、その通りだ、なかなかよく言い表しているぞ。

 とかいうおまえは、ナビのくせに自然物を愛でる方だよな。
 無駄に、花言葉とか知ってるしな(そう言えばこいつは、無属性なのに何故だ?普通こんなのは草属性のヤツが知ってるんじゃないのか?さっきの花屋の女のナビとか、、、)。

 本当、意味解らない。
 何が良いんだか、、、。

 あ、珍しくお前に賛成。

 あたしには、未来永劫理解できないよ、もののあはれとやらは、、、。

 なんだ、、、?悪い意味で自分に正直な感性?
 、、、余計なお世話だ。


 ふうと、ため息をつくと、バイクを一気に踏み込んだ


 またに景色が流れ出す、よく、風を感じるとはいうがライダースーツにぴっちりと着ていてメットまで被っていると、そんなもの、ろくに感じはしない。
 感じたって何になるんだか、、、夏は涼しいから良いけど、冬なんてうんざりする。


 そんな、あたしがバイクが好きな理由は、何一つロマンチックなものはない。

 ただ、速いから。
 車より慣れればとっても速いし、ちんたらしているのが嫌いだから。

 あたしの愛車はスピード重視の構造、自分で弄くった。
 結構派手に弄くったから、違法改造で、ばれたらかなりやばい位の代物なのだ、あたしの愛車は(飛ばそうと思えば、いくらでも飛ばせる、普通に国家の治安を守る人たちに見つかったら、目の色変えて追いかけられる程の、スピードが)。

 でも、あたしはあたしの車を弄くるのは好きだ。

 機械は美しいと思うから。

 あたしが手を加えた分だけ、はっきりとその手を加えた分の成果を発揮してくれる。
 
 そうはっきりと、だから機械いじりは楽しい(有能無能が解るけどね、勿論あたしは有能)。


 あたしは、はっきりとしたもの好き。

 目の前にあるはっきりとした形があるものが、きちんと自分で自分の存在を示す、そんなものが。
 そして、それを、寄生しているんじゃない、静かに傍らで支えるそんな存在も、、、。


 え?
 あー、、、うん。
 そういわれれば、あたしは、自分がはっきりしたやつじゃないと付き合っててイライラするかな。
 よくわかってるな。

 、、、、というか、お前あたしの思考読めるんだ、、、どうして、、、あ。
 こら、お前アタシのメットに何つなげてるんだ、、ん?コード?

 、、、お前、また余計なプログラム造ったのか、、、。

 ん?今度は何を造ったんだ?ふ〜ん、、、人間の思考の脳波を言語化するプログラム?プライバシーの侵害もイイトコだ、全くそんなものを使うヤツは最低だ。
 使うヤツはホント、下衆、下劣、外道。


 まったく、、、。


 あ、でも、いいな。そのプログラム、消すなよ、バックアップとかも取ってるんだろ?
 コピーで良いから、それ。あたしのデータバンクに入れておいてよ絶対。

 え、もう入れておいた?流石きまわしがきくな。さて、何に使おうか、、、えっとー、、、ふむ、、、楽しみ楽しみ。


 ん?あたしはいいんだよ。あたしは。

 元からそうだから、もう、落ちるトコまで堕ちきってるから。

 だろ、納得だろ?

 解ってるから入れておいたんだろ?
 なんやかんや言いつつ、あたしのこと解ってるね。


 だいたい、お前とアタシはに付き合いってもう、二十年ぐらいだよな。

 ん?あ、二十年と百八十七日?
 細けぇ、、、。


 いくらあたしでも、そんだけ長く一緒にいれば、あんたのこと、否応なく、そりゃわかるようになるわな。ホント、否応なく、否応なく。


 お前の無口さとか、お前の意地悪さとか、お前の腹黒さとか、お前の嫌味さとか、お前の狡猾さとか、、、このぐらいでやめとこ。
 上げたらきりがない。

 あ、笑ったな。人に言えないだって?そうだね、反論しません。
 

 にしても、このプログラム、考えようによっては便利で良いな。

 応用きかないのか?
 全部思考が読まれるのは癪だが、お前と会話するときわざわざ、PETを取る必要がないな。

 だってさ、人目なんてどうでもいいけどさ、めんどくさいじゃないか。
 今のPET、手に取らなくてすむように、腕とかに装着するタイプだろ?わざわざそれを、とってからって、、、効率悪いにも程があるだろ、、、。

 、、、あー、、、そーだね、、、あたしがPETに隙あらば、ウラで入手する妖しげな、バグ&ソフトを入れようとしなければ、安心して、いつでもフォログラムとしてこっちにこれるのね(今、フォログラムとして出てるのは、恐らく車を運転して、そうすることができないのを承知でだ、こいつの性格から読みとって間違いない)。


 ゴメンワルカッタヨー、シナイヨウニココロガケルカラー。


 腹が立つって?あー、、、うん、態とだから。