ある日の出来事
私、生まれも育ちも生粋のアメロッパ人、そしてアメロッパ在住の、今年、大学生になったばっかりの、だいたいの人のようにバイトしている、普通の女です。
そのバイト先で起こったある日のこと、別に大きな事件って訳ではないけど、いいきっかけになった日で、何となく忘れられないことなんで。
「ふぅわぁあ…」
私は大きくあくびをしていた。
私がバイトをしている店は、店長の自宅兼店舗。店は何やってるかというか、なんというか…、新旧問わない品揃えで、主に、カスタマイズ用の電子部品だったり、バトルチップに、本、ＣＤに、はたや、今では聴く人がいるのかレコードまで置いてある（店長曰く何か別格に思い入れがあるらしい）。
まあ、そう言った物のよろず屋みたいなもんだと思って。
お客さんは滅多に来ないから（だって、この店、アメロッパ軍の近くの裏道にあるんだもん、そんなお堅いトコの近くなんて寄りたくもないもんね）、楽な仕事（それでも結構お給金が良いんだ）。
その時、珍しく、店長も（此は珍しくないしょっちゅう）
、私のナビも居なくて本当に店内には私一人だった（あやしいが、本人曰く店長は店で扱う品物の取引に、私のナビは私の頼みでインターネットシティに）。
私は、店の陳列棚を見ながら。本当に年季が入ってるよな…この店っと。考えていた（この店は店長で四代目らしい、よくつぶれないよな、ニホンでいうカンコドリが鳴いてるだっけ？）。
からん。からん。
入り口のベルが鳴った（凄く旧式だけど…ベル自身は言い音色だと思う）。
「はひ！…い、いらしゃいませ！」
一瞬本気で眠り被っていたから、変な裏声で答えちゃって恥かいたな…。入ってきた、お客様は茶髪のニホン人の男の子と、人型の青いナビだった。
男の子の方は、頭のナビマークが入った水色のバンダナが印象的、日に焼けた肌で元気な少年なんだなと思った。
ナビの方は、男の子のバンダナと同じナビマークが付いている胸のエンブレムが印象的、男の傍らにぴったりとくっついていてオペレーター思いなんだなと思った。
「へぇ。こんな所にお店があったんだ〜。」
『こんなとこにあっても、お客さん入りづらいんじゃないかな〜』
ほっといて。どうせ、あんた達の国のカンコドリとやらと仲良くしてますよ（ところでカンコドリって何だろう？）。
「あー！バトルチップも置いてある！あれ？ＣＤ？電子部品？スナック菓子？」
『ここって、何の店？』
私もしらんよ（あの店長曰く、よろず屋だけど）。
「あ！そうだ！そのお姉さん！！此処って何の店！？」
え、私に切り替えすの？私だって知らないよ！あのオバン（店長）がよろず屋っていってし…ま、よろず屋で良いか。
「えっと…よろず屋です…。」
「ねぇ？よろず屋って…なに？」
『えっとね。種々のものを商う店だよ。ほかにも、何事にも一通り通じた人、何でも屋。って意味があるんだけど。一番目の意味と三番目の意味がこの場合適切だね。』
「へー。」
私も、へー……。しらんかった…。ま、一つ賢くなったね。私もナビに聴けば良かった。そういえば…、私最近…自分のナビとこういった会話したっけ？
その子は、ナビとおしゃべりをしながら店内を探索していた。
この店って、だいたい小学校の教室より一回り大きいぐらいだけど、品物が所狭しと置いてあるからそれより狭く感じる（適当にジャンル分けされてる程度で、後は無造作に重ねてあるか、小物だったら適当に箱に突っ込んである、けど、レコードだけは綺麗に棚に入ってる）。
「バトルチップなにがあるかな〜。」
『こうゆうとこって、掘り出し物があるかもね』
「日暮さんトコより、ずっとたくさんあるね。でもここテキトーに置いてる〜。しかも段ボールに詰め合わせてあるだけ〜。」
『お！お店の人に聞こえるよ！！失礼だよ！！此処は専門店じゃないからだよ！！日暮さんのところみたいに綺麗に陳列されてるのと比べると、確かに此処は無造作で適当だけど！』
聞こえてる聞こえてる…。どっちも失礼だけど、ナビの方はフォローになってないから！逆に失礼度増してるよ！！クレームならバイトの私じゃなくて、店長である此処にいない、あの面倒くさがり屋で、横暴で、歳を考えない発言を抜かすオバンに言って！！
私は誰もいなかったら、顔を顰めまくってたと思う。
「何があるかな〜」
『ああ！そんな乱暴にかき混ぜちゃ駄目だよ！！傷が付いちゃったら弁償だよ！！』
「ああ、別にいいですよ。」
私もそうゆう風に扱ってるから。
「えぇえええええ！？」
『ど、どうしたの！？』
へー。あの子たちネットバトルやるのか。
「嘘だろー！？ギガクラスのデルタレイエッジが三桁台！？」
『ぇえ！？あ！こっちはバグデスサンダーも三桁！？』
「はぁああ！？スタンダードのソードがなんで五桁台！？」
『ちょ…！？キャノンが六桁！？』
…だよね〜。普通驚くよね、私はネットバトルやらないから興味ないけど、その価値は解ってる。なんで、ノーマルなのが高額で、レアなのが低額なのかって思うよね。
「あれ…？メテオナックルこれは普通に高い？」
『あ…、ハイキャノンも定額だ？』
ウチの店長…本当に適当に値段書くから（チップもみずに）…、ちゃんとした値段だったり、飛んでもなかったりするのよ…。
「値段はともかく、入手困難なレアチップがこんなにたくさん。」
『日暮さんが泣いて喜びそう…』
「いや…絶対泣くね…」
この店って、どこから買い取ってくるのか解らないのよね（店長…ああもう、店長なんて呼んであげない、本人が居なきゃ、あんなんオバンでいい、オバンで。オバン曰く、ちょっとした筋かららしい、合法的なとこだよね？）。
『買う？』
「う〜ん。やめとく。」
『なんで？』
「何となく…怪しいから…」
『……』
それには賛成。あのオバン怪しいのよね。何か前科百犯ぐらいあるんじゃないかな…。
にしてもあの二人、本当に仲良い。私…あいつとこんな風に昔はしゃべってたな。いつからだろ？あいつとまともに話さなくなったの…。用件だけ押しつけて…最近、アイツにやって貰うのが当たり前みたいになりだして…。
「ふふ…」
私は笑ってた。
それを勘違いしたらしく。
「べ、べ、べ、別に怪しんでません！！ごめんなさい！！！！」
『か、か、か、買います！！じゃあこれ！』
「あはは、別に怒ってないよ。好きなの選んで、嫌なら買わなくても良いですから。」
面白い子達…今時珍しいぐらい素直な子達だな〜。
私の返答に安心したように、二人は、顔を見合わせると。
「そうだ、旅行のおみやげだ！みんなにチップを買ってあげよう！！」
『旅行じゃなくて！日本のネットセイバーを代表としてアメロッパのネットセイバーに視察に来たんでしょう！？』
「いいじゃん、いいじゃん！！」
今、ネットセイバーと聞こえたんですが…、きのせいよねこんな子供が…。
「すいませーん！！女の子向きのチップて何処にありますかー！」
「えっと、上の棚の、その緑色の箱の中にドレスアップチップがあるから。それがいいと思うよ。届く？」
「……とーどーかーなーいー！！」
上の棚は、子供の身長だとぎりぎり届かない位置だ。
「じゃあ、待って。取ってあげるから。」
『すいません…わざわざ』
「いいの、いいの。」
こんなに面白いのは久しぶりだから。
その二人は、楽しそうに笑い合いながら、友達の名前や、そのナビの名前を並べてチップを選んでいた。
こうゆうのって、お客さんがたくさん来る店では味わえないよね…。カンコドリと仲が良くて良かったかも…。
しばらく、その子たちは選んだ後結構たくさん買った（もちろん値段は安いチップをね）。
「ありがとう御座いました！」
いつもは事務的にしか言わない言葉に、思わず感情を込めてしまった。けど恥ずかしいとは思わなかった。
いっそのこと清々しいぐらい。
更に機嫌が良かった私は、アメロッパまで来て、チップはどうかと思って、その子たちに、いいお店を教えてあげた（私の友人の実家なんだけどね、友人贔屓を引いても良いとこなんだ）。
私は、おまけ程度に教えてあげたんだけど、その子達は思っていたより喜んで。
「ありがとう！お姉さん！！俺達ここら辺に詳しくなくってさ！！いやぁ！本当にありがとう！！！」
『僕からも、ありがとう御座います。僕たち実を言うと、お土産屋さんを捜して回ってたんです。』
本当に言い子達だな〜、この前大学行く途中に、ＰＥＴでゲームしながら歩いてたくせに、私にぶつかって「何よそ見してんだよ！ババア！！」と、抜かしやがったクソガキと、「ババアだから、老眼でも始まったか？」と、それに乗って揚げ足を取りやがったクズナビとは大違い。本当に同い年と、同じナビとは思えない（私は断じてお姉さんであってババアではない！！それに、視力は１．５！！）。
「どういたしまして。そんなにお礼を言われると照れるな。君たち、本当に仲がいいね。」
その子達は嬉しそうに、ほぼ同時に頷いた。
「お姉さんは自分のナビと仲良いの？」
『お姉さんみたいな優しい人のナビだったら幸せだろうね。』
「………え？」
私は、その何気ない言葉にに、どんと、胸をナイフで一突きされたような衝撃が来た。
「ああ！何だよ！！俺が優しくないみたいじゃないか！！！」
ぷうと、ほっぺたを膨らます男の子。
『ええ！？そうゆう意味で言ったんじゃないよ！！僕からすれば君は、外には絶対にいない、優しい最高のオペレーターだよ！！』
勘違いされたら困る！って、感じで真剣な目で否定した。
「へへ……照れるな……だったら、俺からからすればお前は、外には居ない優しい最高のナビだな！！」
男の子の方は、機嫌を一瞬にして直して、嬉しそうにナビのこの言葉を借りて言い返した。
二人は、本当に仲よさげに見える。
私は、どうだろうか？あいつとは……最近まともにしゃべったこともなかったな……。……私は……オペレーターとして……ナビであるあいつにはどう思われているんだろう……。
……多分……最低のオペレーターかな……。
私は、何だが、無性に泣きたくなった。
「じゃあ、また来るね！！」
『また買いに来ます！！』
「うん！楽しみにしてるね！！」
私は、店の外に出てその子達が見えなくなるまで手を振った。
誰かにまたねって、手を振るのは何年ぶりだろう？そういえば…、あの子達の名前…訊いてなかったな…。
私はしばらくたたずんだ後、店内に戻って、ぼおっと、自分のＰＥＴを意味もなく覗いていると、馬鹿でかいバイクの爆音とともに、オバン…じゃなかった、店長が帰ってきた。
ばさっと、ドラマのワンシーンのようにヘルメットを脱ぎ捨てると。
「ただいま〜。腹減った飯ある？」
………半日近くほっといて労いの言葉なしもですか？一番最初に言うのが食欲か！！可愛い店員をなんだと思ってるんだ！このオバン！！！あ！本人の名誉のために言うけど………さっきから、オバンオバンっていってるけど店長は美人だ。
今年で三十七らしいんだけど…、どう見ても二十代中頃ぐらいにしか見えないぐらいだし、抜群のプロポーションだし、おまけに独身だし、店長目当てに店に来る常連さんもいるぐらい（それでもお客さんが日に数える程度ってどうよ？）。
けど、店長は誰とも付き合ってない（男の人をたぶらかしては…いるみたいだけど…店長は曰く…美人の顔を間近に見れるんだから、その分の正当な料金を貰ってるだけなんだって…）。
私の視線に、気付いたのか、気付かないのか、自分のＰＥＴをとりだして、自分のナビとのんきに夕飯の相談をし出した（あのオバンが一方的にしゃべってるようにしか見えないけど…因みに作るのは私になる…）。
そういえば、あの子達みたいに店長も自分のナビと仲がいいな、と考えていると。
「何か良いことがあったのか？お前？」
本当に勘がいい…。店長に隠し事、出来ないんだよ〜。
私は、素直に今日来た、あの子達のことを話した。
「へぇ…。お前…良い客と会ったな。」
店長は、何処か懐かしむように目を伏せったのは気のせいだろうか？
「はい…。また会ってみたいなって思いました。」
あの子達がかき混ぜていたバトルチップが入ってる箱がならんでる棚。あそこ…ちゃんと整理しよう。店長が並べてるレコードの棚より。
でも、それより…。
私は、空っぽのＰＥＴをのぞき込んだ。
……あいつ、私の無茶な頼みのために、今頃、インターネットシティを駆けめぐってるのかな……ん〜。あの子達見てて、私がどんなにアイツのこと酷く扱ってるか気付いたな……本当にどうしてるんだろ……。
店長は、私の顔と空っぽのＰＥＴを交互に見て、なにか、自分のナビとまたちょっと話す（やっぱりオバンが一方的にしゃべってるようにしか見えない、ナビの方は無口なんだよね〜、声も小さいし）。
「ちょっと、まってろ。良いもんをやる。」
すったすったと、バイクの荷台にくくりつけてある大荷物（よく、あんなにくくりつけて警察に呼び止められなかったのかな？それより此処、軍の近く…。）。
「ほれ。やるぞ、あたしからの餞別だ。今日の特別手当。」
「あぎゃぁ…！？」
ほれと投げられたのは、軽く成人男性より大きな箱、しかも重い！！店長筋力どれぐらいだよ！！
「これなんですか！？一体！！」
箱に押しつぶされて、漸く這い出てた。嫌がらせか！？店長この前、オムライスにグリーンピース入れちゃったのまだ根にもってんの！？いい大人が好き嫌いする方が悪い！！あのオムライスにニンジンは入れなかったでしょうが！！
「おまえ、失礼なこと考えてるな。」
この人、人の心本当に読めるんじゃないの？
「で、冗談は良いですからこれ…何ですか？」
「コピーロイドだ。」
……は？………今コピーロイドっていった？嘘でしょ！？コピーロイドって言ったら確かに今普及し始めてるけど…種類によるけど（大きさが違ったり、デザインの差ね）、こうゆうのってすっごく高いんだよ！？そんなもんをポンって…特別手当とはいえ…バイトにやる！？
「あの……」
「どうせ、タダだ。それにあたしはコピーロイドを既に持っているし、第一そのコピーロイドはでかすぎて、あたしのナビにあわん。」
タダ！？こんな物をタダでくれる人がいるの！？こんなオバンに！！……は！まて！このオバン！コピーロイド持ってるとか言った！今言ったぁあ！！そんなに金持ちだったのかぁあ！？このオバン！！！あ！今いらないからやる的な発言した！！在庫処分！？
「因みに、あたしのコピーロイドももらい物だ。」
『………男からだがな………』
………もてるんだ……、本当に……、あ……店長のナビの声…三日ぶりに聴いた…無口なんだよね……運が良くても一日に一回ぐらいしか聞けないし……あのオバンにはこういった性格じゃなきゃ駄目なのかも………。
いろんな意味で、脱力した私に。
「お前のナビと、出かけて来い。」
………え？
言葉をかける前に、店長は店の奥に引っ込んでしまった（さっきも記したけど此処は店長の家でもある）。
「今日は、飯はインスタントですませる、だからお前は帰れ。」
店の奥から、店長の声が聞こえたので私は、ＰＥＴの時計を見たが、今日は休日なので、バイト時間はまだ二時間もある。
「でも…時間…」
「閉めるぞ？」
「きゃぁああああ！！！出ます！出ます！！」
私は、重いコピーロイドが入った箱と、荷物を持ってすぐに店を出た。
あのオバンの場合、脅しではない。一度、早く帰れと急かされたときぐだぐだと、支度が遅れて、本気でキれられて、店に閉じこめられたことがある（ここは、店こそ古いが最新の警備システムがある）、店から出れず、二時間叫び続けた（あのオバンのナビがスリープモードから覚めるまで）。
私は、バランスを崩してへたくそなスライディングで店を出た瞬間。
がしゃあん。
店のシャッターが全て閉まった（本当にやりやがったあのオバン……）。
バイト…変えようかな…。
下半身に付いた汚れを払ったとき、一瞬痛みに襲われた、思わず手を見ると、ぬるっとした赤い体液が付いていた。
見ると思いっきり、膝を擦り剥いていた。派手に擦り剥いていて、自覚すると、痛みが増した気がした。
私は、これから、この重いコピーロイドを引っ張って自宅まで帰るのが地獄に思えてきた…。
「ああもう…！！これからどう帰れっていうの！！あのオバン！！何なんだよ！！私にどうしろっていうんだよ！！！ねぇ！……」
思わずＰＥＴを取って、アイツに愚痴をこぼそうとしたら、其処には誰にも居ない。
空っぽのＰＥＴを覗いていると、情けないやら、痛いやらでで、本当に泣きたくなった。
いや…、半分泣いていた。涙で視界が歪んできた。
ああ…多分、今…お化粧ぐちゃぐちゃだろうな…マスカラとれて今パンダになってるはず…、泣いたら明日はれちゃうよ…大学……明日さぼっちゃおうかな……。
私が泣き言を考えていると、ＰＥＴから、電子音から聞こえた。
「………めぇる………？」
（泣いてるせいで、鼻づまりで綺麗に発音できない。）読まないよ…、気分最高に落ち込んでるから…。
………さっきまで、あの子達と楽しくおしゃべりしてたのにな………。
「ふぇ…ぇ…え…ぇ…ぅ…ぅうっ」
ああ…やばい…本気で泣きそう…いい大人が（あのオバンにもういえない）…町中で（裏道だから人通りないけど）…だけど泣くのは久しぶりだ…何年ぶりだろ…けど昔…泣いてても一人じゃなかったな…あいつが…慰めてくれたな…いっつも…。
この世界に自分しか居ないような気がしてきて、すっごく寂しくなってきた。
ああ！！この際泣いちゃええええ！！！！
「ふぁああああああぁんっ」
一応、大声じゃなかったけど（さすがに大声を押さえる理性はある）…。でも、泣くって気持ちがいいな、大人になると、子供の時より泣きたいことが増えるのに、世間からの目が気になって、子供の時より泣けなくなるんだな。
泣きながら、そんな冷静なことを考えていると。
『ただいま戻りま…って、わぁあああああ！！！どうしたんですか！！目にゴミが入りましたか！？気分が悪いんですか！？怪我したんですかぁああ！？誰かにいじめられましたかぁああああ！！！』
帰ってきたとたんから、オーバーリアクションの私のナビ（前三つは解るけど、最後は何？私は小学生？）。
「ふぇっ…」
『ほ…本当にどうしたんですか…！？取り合えずどうしたんですか！！！ああああ！！泣かないで！！』
「ぅ…ぅうっ…」
『あ！こすっちゃだめです！こすっちゃ！！！』
こんな馬鹿な会話をしばらくしていた、けど、私は何処か心地よかった、必死に私のことを慰めてくれて、私のこと気遣ってくれてるんだなって。安心できた。
私は、取り合えず漸く泣きやんだ（その時鏡見て、急いでお化粧全部落とした。だって、お化けパンダよりすっぴんの方がマシだもん）。
「ごめん…」
『驚きましたよ。帰ってきたら泣いてらっしゃるんですから…どうしたんですか？』
「う…」
『い！？嫌なら言わなくて良いです！！！す！すいません！！！』
昔から、本当にこいつ心配性なんだよね。その上、不器用だし（手先は器用だけどね、この前だって間違って私が消しちゃった提出用のレポートのデータ、あっと言う間にもと道理に構成し直してくれたから）。
「泣いてない〜…ちょっと、涙腺がゆるんだけだよ〜…」
『だったら、泣いてるじゃないですか！！』
「うぐっ…」
『何があったんですか！！』
「別にたいしたことないよぉ〜足をちょっと擦り剥いただけ…。」
擦り剥いた膝を見せる。
それを見て形相をニホンのオニ（だっけ？）のように変えて。
『ちょっとじゃないじゃないですかぁあああ！！！』
あ、怒った。こいつ、怒ると怖いんだよね…おとなしい奴はきれると怖いんだよ〜…。
「大丈夫だって。大丈夫…」
『何処が大丈夫なんですか！！こんな血だらけで！！もしばい菌でも入って化膿でもしたらどうするんですか！！！』
お前は、お母さんか？
「こんなのほっといても治る…」
『自然治癒でも確かに治りますが、やはり消毒はすべきです！！！』
でも、この傷の大きさじゃガーゼだろうな〜。私、不器用だからな〜。前、割れ物の商品を包もうとしたら、店長に、お前がやると割れ物注意どころか、割ってる物注意になるから、金輪際お前は物を包むなって、念を押されたぐらいだもんな。あ、昔、美術関係で先生に私は、センスは悪くないけど手先のほうはって、言われたぐらいなんだよね。母さんは器用なんだけど…、いつも怪我したら母さんが手当てしてくれたんだけど…、一人暮らししだして初めてだよ〜、こんなおっきな怪我〜。自分でやったら、逆に怪我をほじくりそうだよ…、痛いだろうな〜。そう言えば、家の救急箱にバンソウコーすらなかったな〜、あ、消毒液もきれてたよ〜、ガーゼにいたっては一人暮らし初めてから、買った覚えすらないよ〜。
『あの…もしもし…』
「はい？」
『全部口に出てます…』
「…………」
恥ずかしいことことない…。
「どうしよう…」
私は、思わず寄りかかった。
………？、なにに？人通りが少ない裏道だとはいえ、此処は綺麗なところだよ？ゴミとかあんま落ちてないし。ましてや、私が寄りかかれるぐらい、こんな大きなゴミなんて……？
私は、一瞬、理解できなかったが、膝の痛みですぐさま結びついた。
『なんですか？そのでっかい箱？』
「ああ、店長から…貰ったというか…押しつけられたっていうか…あの…」
『だから、なんですか？』
「コピーロイド………」
沈黙すること、数十秒。
大の大人と、（あ、しるし忘れたけど、私のナビは男性型のナビだよ、見た目はそうだね、容姿は悪くないよ、どっちかといえば良いほうじゃないかな？その代わり、全身鎧みたいな格好だけどね）ナビがが、無言で向き合ってる姿は端から見たらさぞかし滑稽だったと思う。
『……っ』
切り出したのは、アイツの方で。
『貰ったって！？嘘でしょう！？確かに少々高めの手頃な値段のコピーロイドはありますが、箱の型から見て！！ほら！！そのマーク！！！高価な物ですよ！！絶対！！！』
「い！？」
そのマークは、私が持ってるＰＥＴを作っているＩＰＣ社と並ぶような、最近コピーロイド産業で大きくなった会社のマークがはっきりと入っていた。
「ぇええええええええ！！！だったらこのコピーロイド！！一体いくら！！？」
高い物だとは思っていたけど,、ブランド品！？あのオバン、考えてみればバイクでも、服でもブランド品でかためてる！！！店はカンコドリが定住してるのに、どこからそんなお金がわくの！？！？やっぱ男からかよ！？世間はこうなんで美人には優しいの！？！？！？
『これ…本当にどうするんですか？』
「ん〜……」
しばし、唸る。
…………、アホらし……、時間の無駄だ……家に帰ろう……明日にでも店長に返そう…。
でも、こんなに、こいつとしゃべったのは本当に久しぶりだ…、最近は本当にしゃべってなかったもんな……その点はあのオバンに感謝しようかな……。……でも、何で突然私にコピーロイドを？………
立ち上がろうと、足に力を入れた瞬間、がくっと、崩れた。
「……ぁっ！」
小さく声が出るほど、結構強い痛みがした。突然動いたからだ。あ、また新しい血が滲んできた。い〜た〜い〜。生理的に涙までにじんできたよ。家まで帰るんだったら、この痛みがおまけについてくる……。
『……私をそのコピーロイドにプラグインできますか？』
はっ？突然なに！？
「なんで？」
『お願いします。というか良いからはやく…！』
こいつの語尾が強まった。珍しい、コピーロイドを試してみたいのかな？
………、私のことはいいんだ、へー。………そうだよね………私こいつのこと…最近……大学でイライラすることが増えて……気にくわなかったら……難癖つけて……こいつに当たって……そういえば……オペレーターと仲が悪くなったナビが……コピーロイドにプラグインしたまま失踪って……事件が最近増えてきたって新聞に載ってたな……こんな酷いオペレーターの私を嫌いになって当然だよね………表では私を気遣って出さなかっただけかも……これを機に私から離れようとしてんのかな…痛みで、悲観的に考えてきたよ……。
私は、俯いたままで、箱からコピーロイドを取り出した（やっぱおおきい、優に私より大きいぐらい）。
「プラグイン……」
プラグインすると、コピーロイドがあっというまに、ＰＥＴの画面や、ミニミニのフォログラムでしか会ったことのないアイツの姿にかわり現実に現れた。
噂には聞いていたけど、痛みや思考が飛んでびっくりする！！
わぁ…、おっきい！！私よりずっと大きい！！父さんより大きい！！フット部の連中ぐらいあるんじゃない！あんまり、こいつの大きななんて考えたこともなかったし、第一、今まで、私が見下ろす形だったのに見下ろされる！？変な感じだよ〜。うっわ〜、ＰＥＴ越しとか、フォログラムとかじゃじゃ、あんま解らなかったけど、こいつの装甲ごっつい！！父さんが昔こいつを私のナビとして連れてきて、初めてＰＥＴ越しに見たときごっついなっておもったけど！？やっぱごつい！！あの子が連れてた青いナビなんて、ずっと華奢だったよ！？うっわぁ！？いろんなナビを見て何度も思うけど、ナビによって本当に外見違う！？というか、コピーロイドにはいるとみんなおっきくなるの！？
いろんな思考を巡らせながら、私は現実に出た自分のナビをみていると、あいつはゆっくりと目を開けて、私を見て、面白いぐらいびっくりした。
おそるおそる、手を握ったり、きょろきょろと辺りを見渡したり、自分の体を触ったり、なにより、私を恥ずかしくなるぐらい、じいっと見た。
「奇妙なものだ……」
漸く口を開いた第一声、それに賛成する。ＰＥＴ越しじゃないからずっとクリアな声だ（考えてみれば、これが本当の声なんだ）。
本当に大きいな、というより、大きいという綺麗な表現じゃなくて、ごついからえっと………。
「……で…でかぶつ……？」
「………」
初めて現実に来た、自分のナビにいった第一声は自分でも失礼だと思った。
「………」
「ごめん……」
やっぱり、キライになったんだろうな………。
一瞬、痛みとは違う、涙がこぼれかけた。アイツの足音がしたから離れるんだと思った（なんだか金属音っぽい）。
全身がとっても重くなった、ふわって、て、あれ、浮いた？
「はやく手当てしに帰りましょう」
おぉおぅうううう！？一瞬にして片手でだっこされてた！？私はお人形さんか！？（前がごつすぎて、両手のだっこは出来ない、って、両手のだっこってお姫様だっこになる！？恥ずかしいからある意味ましか！？）
「ちょ！？」
「足、痛いのでしょう？だったらこうしたほうが痛くないはずです。」
のんきに世間話をするかのようにさらりとかわす（そのすきに、もう片方で、私の荷物を持った）。
左手に私、右手に荷物、顔を見ても全く涼しい顔をしている。
うわあ、力持ち〜。確か、高校の時付き合ってたカレにだっこしてもらったら、思い出したくない…。えぇえい！記憶からデリート！！……できない…。カレが支えきれなくてひっくり返って、腰を痛めた事なんて！！忘れようのない悪夢！！カレは、バスケ部だったけど、部で一番力自慢だったんだよ…私てそんなに重いのかな…確かにその当時は今より五キロ重かったけど…。
「あの…」
「ん…？」
「出てます…全部…」
「…ぅぅう…」
な〜さ〜け〜な〜い〜。恥ずかしい…うう…口に出す気はなかったんだけど…（因みに、何でナビが知らないかっていうと…デートにＰＥＴはともかくナビを持ってくる人はいないでしょ？）。
本当に、この状態で帰ることになった…（知り合いに見られませんように！！！）。
「………」
「………」
何か、会話がない…（てゆうか、恥ずかしくて顔があわせられません！！）。
仕方ないから、思考に移ることにした（これは漏れたら嫌だから、さりげに口を押さえておく）。
こんなことしてくれてるけど、こいつは私のこと嫌いなのかな？一応、私が小学校の頃からだもんな〜、こいつとは。考えてみれば、換算すれば親より長く一緒に居るんじゃない？こいつは、私にとって…、どうゆう存在なのかな〜？う〜ん…。
ちらりと、顔を見る。相変わらず、涼しい顔。
私が小学生の時はびっくりしたな〜。周りの殆どのナビが、ちゃんと意識を持った、疑似人格を持ったナビを持ってたんだよね。私はそれ見てもあんまり欲しいって思ってなかったな〜。けど、父さんが、連れてきたんだよね〜。びっくりしたな。こんなお兄ちゃんみたいなのが私のナビになるのかって、友達みたいに自分と同じぐらいの外見のナビかと思ったんだけどな〜。いまじゃあ、殆ど年齢同じだよ〜（ちょっと、まだ、こいつの方が年上に見えるけど）。
此処まで思考を巡らしていると、軽い衝撃とともに、止まった、止まった先は薬局。意味が分からなくてきょとんとしていると、近くのベンチに座らされて。
「ちょっと、買い物をしてきます。お財布、貸してください。」
「？いいけど…、何買うの？」
「何って、家にないんでしょう？薬。」
「…あ……うん」
覚えてたんだ。私みたいなオペレーターの独り言。
「絶対に動かないでくださいね！」
ぴっ、と、私の前で人差し指突きだして、小さい頃母さんにされたみたいに頭を撫でる。
私は子供か！？
……けど、父さんより大きな手ですっぽりと頭を包まれて撫でられるのは不快じゃなかった。
私の顔の表情に気付いたのか、気付かなかったのか知らないが、薬局に入っていった。
流れる人波を眺めながら（此処は町中、中心街に近い）、ぼおっとしていると。昼間の男の子が居た！？
「あっ！」
「…あっ！」
あっちの方も気付いた。一瞬、あの子が判断に困ったのは。多分今、私がお化粧してないからだと思う。
「昼間の…！」
「昼間はどうも…！」
まさか、会いたいなっと、思っていたけど。うっわ〜、偶然〜。
その子は親しみの表情を見せて元気な笑顔で答えてくれた。
「ごめんね、お化粧落として、ぶすになったから分かんなかったでしょう？」
「ううん、お化粧しない方がお姉さん美人だよ。」
『はい、その方がずっと良いですよ。』
「やだなぁ〜、お世辞でも照れるよ」
私が照れ笑いを浮かべて、それに答えるように更に笑みを深くしてくれた。けれど、私の怪我を見ると。
「お姉さんどうしたの！膝！」
「ああ、これ？ちょっと、擦り剥いちゃったんだ。」
『痛そう〜』
優しい子達だな〜。
「お姉さん何処で怪我したの！？」
『何でこんな所に居るんですか？』
「えっと、仕事から帰る途中にちょっとね。此処にいるのは、私のナビがね、薬買ってくるから待ってろって。」
くいっと、私は薬局を指す。
「へぇ、お姉さん、コピーロイド持ってるんだ。」
「うん…まあ…」
私は、苦笑いをした（このコピーロイド、持ってたというより、持ったばかり…）。
苦笑いしてる私を後目にその子は、すとんと私の横に座ると。
「ねえ。お姉さんのナビってどんなの？」
『あ、僕も訊きたいな。』
えー。あいつのこと？ん〜。難しいな、逆に長く居すぎて、綺麗に要約して説明しにくいな〜。アイツのことなら、全身の毛髪量の数なんて比べ物にならないほど覚えてるからな〜。
「一言で言えば…お節介なほど世話焼き症？……かな？」
「あはは、何処のナビも同じなんだ〜」
「へ？」
「いやさ、こいつも、お節介なぐらい世話焼き症なんだよ。例えば、学校に行く前とかしつこいぐらい持っていく物の確認は急かすし、身の回りが汚かったら、掃除しろだのうるさいんだよ〜」
『言わなきゃしないでしょ！！』
その言葉に、そのこのナビは目くじらを立てて怒った。
全然、姿形は私のナビとは似てもにつかないのに、なんだか怒る姿が似てるな。
「ああ、わかる、わかる。そのくせ、宿題とかは手伝ってくれないんだ。そういった物は自分でやるものですって。」
「あ！俺んとこもです！！」
『当然だよ！！そうしなきゃ自分の力に出来ないでしょ！！』
「「えぇえええ！？ちょっとぐらい手伝ってくれても！？」」
私と、その子は綺麗にデュエットになった。
思わず、向き合って、笑ってしまった。
「お姉さん、俺と同じだー。」
「そうだね〜。宿題いくつになっても面倒なんだよ〜」
『面倒でもなんでも、やることはすべきです！！』
「「は〜い…。」」
叱られてしまった…、私より小さい子に…（ナビは、見た目の年齢は変化しないから、もしかしたら、私より年上かも知れないけど、気持ちの問題ね）。
「怒られてしまいました〜。」
私は、ワザと肩を落として見せた。
ちょうど、その時、アイツの金属音みたいな足音がした。
「あ、帰ってきた。」
私の声を合図に、足音の方を振り向くと、アイツが居たんだけど………。
「おや？誰ですか？この方たちは？」
「「『ぷ…』」」
私達は、思わず吹き出しそうになった。だってそうでしょ！？フットボールの選手ぐらいは優にあるぐらいのでかくて、全身鎧みたいなごつい男性型のナビが、薬局の可愛いマスコットがプリントされてた袋はともかく、その可愛いマスコットの大きな抱き枕を持ってるんだから！！！そのギャップを見て笑わなかった人に金一封あげたいぐらいよ！！！
「ど…したの…その…抱き…まくら…」
私は、笑いを堪えるのに必死で、その原因を訊くことにした（じゃないと、笑い死にそう、私の横にいるこの子達もお腹を押さえて笑うまいとしている、初対面のナビに失礼だと思ったのだろう）。
「ああ、これですか？えっと…」
ちょっとごめん、こいつの話を要約するね。つまりこうだ、私を手当てするための消毒液やらガーゼを買ったら、レジでくじ引きがあってそれを言われるまま引いたら、今こいつが持っている…マス…コットの…抱き…枕が…当たったと…ああ…やばい…笑いそう……。
必死にお腹を押さえて、震えている私達を見てアイツは、不思議そうにのぞきこむ、やーめーてー！！堪えられなくなるー！！！
私はとうとう、堪えきれなくなって。
「あはははははっ！！！！あー！もう！だめー！！あはははははっ！！！」
「お姉さん笑わないで…って！もう駄目だ！！あははははははっ！！！」
『失礼だよって…僕も限界…！あははははははっ！！！』
私の笑いにつられて、あの子達も笑っちゃった。
当の本人は、きょとんと、目を丸くしてどうした物かと言った顔だ、マスコットの方も同じような目だから、更に笑いをそそる。あー！ツボに入ったー！！！これは本当に笑い死ぬかも！！
周りの人が目をとめて、恥が笑いを止めるまで笑ってた。
「すいません…」
「べ、べつに…怒ってるわけじゃ…ないから…」
まだ、お腹が痛い上に、笑いすぎて息が切れてる（抱き枕は降ろして貰った）。
「ひー、腹いてえ〜。」
『久しぶりにこんなにに笑ったよ〜』
本当に、そうだね〜。コピーロイドってこうゆうことも引き起こすんだ〜。（ちょっと？違うかな？）、………あのオバンにコピーロイド貰って良かったな…。
空を見ると、もう茜色の空が藍色に染まりだしていた。
「君たちは、観光に来たみたいなこといってたよね？お父さんやお母さんが心配するんじゃない？」
「あー、大丈夫です。全然。なあ。」
『うん、自由時間は多めにとっておいたから。』
その時、その子のＰＥＴから、電子音が鳴った。
「ちょっと、ごめんなさい。」
その子は、私達から見えない位置まで移動してすぐに。
「ごめん！お姉さん！！！行くぞ！！」
『うん！事件だね！！』
戻ってきたと思ったら、その子達は、さっきまでの優しげな表情から一変、きりっとした厳しい表情になった（事件って…何？）。
「絶対！また来るからー！！」
『お世話になりましたー！！』
「ちょ…」
声をかける今に、その子達は雑踏に消えた（本当に…何なんだろう？あの子達？）。
取り合えず、残された私達は顔を見合わせて。
「何だったんろう…あの子達…」
「名前…お聞きしてませんでしたね…」
「あ…」
私は、もし、また逢えたら絶対に名前を訊こうと誓った。
足をブラブラさせる私を見て、アイツは、はたと、気付いたように買ってきた物を取り出し始めた（でっかいこいつが、ちまちまと袋に手を突っ込んで取り出す姿にまた笑いそうになったけどね）。
「手当てします。足を出してください。」
そう言えば、私怪我してたんだった。笑って興奮したせいかアドレナリンが痛みを消したんだろう、痛みに鈍くなると、人間は危険だって本当だな。
私は素直に足を出して手当てしてもらった（し〜み〜る〜！！しかも大分血が固まりだしてんのに、綿棒でぐりぐり汚れを取る！！拷問だ！！）。
痛みに耐えながら、手当てして貰ってるのを見ながら。
でも、こいつ、本当に器用だな〜。私だったら、もっと痛くしただろうな。嫌じゃないのかな？私みたいな酷いオペレーターの怪我の手当なんて。あ、また涙がにじんできた。今日は涙腺が特別にゆるみやすいのかな？
涙が滲んだことを気付かれたくなかったが、私の目の許容量が、溜まった泪を受け入れきれずに、ぽたりと、零れた。
こいつは、すぐさまそれに気付いたみたいだけど、今度は、別に大きなリアクションなんかせずに。
「どうしたんですか…何か話したいことがあるんですか…」
手当を続けながら、酷く優しく語りかけてきた。
「あのね…さっきの子達がね…昼間…お店に来たの…」
自分の声じゃないみたいに声が震える。情けない、ぎりぎり泣き出しそうなのを堪えてるの丸分かりだ。
「それでね…一緒にね…仲良くお買い物してたの…それでね…ちょっとね…話したの…」
もう、泣き出さないようにするので、文節ごとに変な風に区切るしかない。
「それを見てね…私はどうだろうって…思い直したの…そしたら…最近アンタに…酷い事ばっかりしてるなて…今日だって…どうでも…良いこと…頼んで…」
ぎゅうと、自分の手のひらを握る。絶対痛いぐらい握っているに、今は泣かないように全神経を目に傾けていつから痛みはない。
「…だから…最低の…オペレーター…だなって…嫌われて…るんじゃ…ないかな…って。…」
私は、もう我慢できずに、久しぶりに周りに構わず泣いてしまった。
唯、怖くて、怖くて。
ずっと一緒に居すぎて気付かなかった、考えてみれば、自分がどれだけこいつに頼ってるか、こいつがいなかったら私は多分何も出来ない。
今の時代、疑似人格を搭載してるか、搭載してないかを除いて、ナビを持たない人はほぼいないと言われる。
だから、当たり前すぎてどれだけ彼らが重要か解らなくなる、だからぞんざいに扱える。
手下のように、奴隷のように。いらなくなったら物のように捨てる人もいる。
実際、あの子達のように、友達のように笑い会える関係を気付いている人は多分少数派だ、私も昔は、共働きの両親の代わりにこいつを本当の、お兄ちゃんみたいにすらに思っていた（恥ずかしいんだけど、一時期此奴をお兄ちゃんって呼んでた）。
最近は、はっきり、綺麗事を抜かせば、道具みたいにしか思ってなかった。
でも最近は、大学で面白くないことがあって無意味にイライラいるとき、こいつに怒られるたびに、心の何処かでこんな事も思ってた。
五月蝿い。ナビに、データの塊に、何が分かるんだって。
昔からいっぱい迷惑かけてきてるのに、一番自分を思ってくれている奴だったのに。
今さっき、自覚した。嫌われてるんじゃないかって、考えは怖いぐらいだ。
私は、馬鹿だ。
私は、俯いて嗚咽を漏らすことしかできない。
そしたら、アイツがもの凄い力で私が握りこんでた手をしっかりと握った。
脈打つことのない手は冷たいもので、痛いぐらい握られたけど、それは嫌じゃなかった。
「嫌いになってなんかなっていません。いえ、頼まれたって嫌いになんかなりません。」
私は今、どんな顔をしているんだろう？
「だから、泣かないでください…」
頬を撫でられると、更に涙があふれた。
「ナビというのは、人間に使われて当たり前です。確かに、酷いことだってされたりします。けど、あなたは自分が思っているほど酷いオペレーターではありません。自分を卑下しないでください。もしあなたが、自分が思ってるような酷いオペレーターだったら。」
私の涙で濡れる事なんて構わずに、涙を指ですくった。
「ナビの…私のためなんかに泣かないでしょう？」
私は、今どんな風に泣いてるんだろう？お化粧は落としたから、パンダになることはないけど、顔はくしゃくしゃだと思う。みっともない。
ああもう、涙で手が濡れて、汚れるぞ、馬鹿。
「私は嬉しいですよ。」
本当に、私みたいなオペレーターには勿体ないぐらいだ。
突発的に書いた物です。
ん〜…何が書きたかったのかな〜？私は？
予定ではこの半分ぐらいだったんですが？のりに乗ってどんどん長く…。
オリキャラを出すのは結構楽しかったですけど、取り合えず、あるオペレーターとナビ、という物語を書きたかったのでしょうか（鷹岬版とアニメをごっちゃにしたかんじですねこれは）？
長く居すぎると、お互いの大切さが分からなくなるというのが主題なのでしょうか？
人の振り見て我が振り直せ？みたいなところがありました？これに関連する話をまた書くかも知れません（楽しかったので）。
特別出演で、青組を出してみました。
熱斗君は、確かネットセイバーであることを隠していた気がしましたが、其処は広い心で。
レアのバトルチップも出しましたが、これはネットを巡って私が適当に格好いい名前だなっと思った物を出しました。
もっと、短く綺麗にまとめられたら良かったな、長すぎる。
けど、書いていた凄く楽しかったです。
コピーロイドとかナビに関する観念や設定は、完全なる私的な物です。
豆知識、よろず屋さんについては、珍しく辞書を使いました（電子辞書ですが）、私も知らなかったんですがカンコドリってカッコウのことだったんですね。
ＢＹ シンプル
下にちょっと、おまけがあります（ハンターさんが一言だけ出てますよ）。
おまけ。
手当が終わった後、もう殆ど痛くなくなったから、こいつとしゃべりながら帰ることになった（私の荷物とか、買った薬とかはこいつ持ちだけど。抱き枕は私が持っている、だって、街行く人を笑い死にさせるわけにはいかないでしょう？）。
中心街に近い此処でも、コピーロイドに入ったナビは珍しい（たしか普及率はアメロッパが一番高かったと思うけど…持ってるのって殆どお金持ちが多いから、コピーロイドが普通に出歩いてるのは高級住宅街とかなんだよね。）、みんな珍しそうに振り返ったり、めちゃくちゃに写メを取るティーンエイジャーもいる（まあ、こいつは格好いい部類に入るせいもあると思うけど）。
世間話をしながら、ふとこいつが。
「感謝しなければなりませんね。」
「え？」
意図のない言葉を漏らした。
「ほら、あなたが会っていたあの茶髪の少年と青いナビ。もし、今日会わなかったら、あなたが私を見つめ直してくれることも、私のために泣いてくれることも、なにより、コピーロイドに入って、こんな風にあなたと現実で話すこともなかったでしょうから。」
ふわりと、優しい笑みを見せる。確かに、あの子達に感謝しなきゃね。ああ、本当に名前だけでも訊いていれば良かったな。
その時、街頭の大画面テレビで、事件の生放送の特報が流れた。
幸い、その事件は今さっき、ネットセイバーによってすぐさま解決されたらしく、もし、止めなかったらアメロッパ中の重要なデータが全部デリートされていたらしい（物騒な話）。
そして、未だ事件の後かたづけで、ごたごたと忙しそうに動き回る、ネットセイバー達のインタビューに移った（本人達からすれば、迷惑なマスコミだろうな〜）。
まあ、急いでいたからみんな二言三言でインタビューから逃げていた（こうゆうとき、マスコミは公務執行妨害にならないのかな？）。
その時、あの子達が映った。
「「え…？」」
そして、一瞬遅く出たテロップには、「ニホンの最年少ネットセイバー。熱斗 光」と出ていた。
『今日の事件は大変でしたね〜。』
『え、はい？』
『ニホンから、代表として我が国に視察に来て…』
『すいません！急いでいるので…！ロックマン頼む！！』
『もお！熱斗君たら！！えっと…詳しい話はアメロッパのネットセイバーの方から、会見がありますので僕らはここで！』
『あ！ちょっと！？』
『ハンターさん！！パス！！』
『ええぇええ！？』
私達は、テレビに釘付けになって、持っていた荷物を落としそうになった。
「…名前…分かったね…」
「…ですね…」
そう言うのが精一杯だった。