人は見かけに寄らず 4
「合格。さすが、高い金を払っただけあるな。」
場所は、いかにも怪しい裏町。案外、普通の道から少し外れれば簡単に見つけられる。ま、少ないプライベートタイムで来てるんだからどうでも良いだろう。
「どうも、けど、捜すのに苦労しましたぜ、何せ、注文が注文でしたからね。」
目の前の天人商人は、望みが薄くなった髪を撫でながら態とらしく困った顔をする。
「ふ、しかしまあ、こんな奴どうするつもりですかい?みたところ、アンタ様は俗なことに使うたまに見えませんが…」
「客に深入りするのは頂けないな…」
アタシは、余計に札束を投げてよこす。
天人商人は、それを嫌な顔一つせず懐にしまう。
此処まで来るのに何処までかかったか…、こんなこそこそしてまで…アタシは何をやっている…?実に不利益なことをしているのは分かってる…理屈でそう言い聞かせたい…けど…何故?
自分で、自分が何をしているのかよく解らない…。
正直、自分にこうゆう事をしようとする心が何処にあったのやら。驚きだ。
「はん、こっちにはこっちの事情があるんでね。」
「ふふ、まあ、俺の知ったことではなさそうですねぇ。」
アタシは、一応便宜上だろう出されたクソ不味い茶を一気に飲み干すと。
「いいか、絶対に間違えるなよ…、タイミングをミスったら…、やべえんだから…」
「こっちも信用第一…ここの所は裏も表も商いの鉄則ですんで。」
「良い根性だ…商いに、天人も地球人も関係ないからな」
「同感ですぜ。」
あと二、三交わすとアタシはかびくさい、経営者本人曰く事務所を出た。
表道に出た瞬間、見計らったんじゃないかと思うほどいいタイミングであの、銀髪やる気ゼロヤロウからかかってきた。
「よお、てめぇか。」
『おまえさぁ。もう少し、労りとかさぁあ、そーゆう温かみの欠片でもを含めた声音で返事できねーの?ああ、今日日の若者はなんと心寂しい〜。』
「じゃかましい。お前は電話越しでもむかつく第一声しかかけられんのか…!」
此処まで胃が持ったのが不思議だぁあ!!!案外アタシの胃は丈夫なんだなぁ…って!?ああ!!なんでアタシがこんな!神経を直接金たわしで撫でくり回せるような不快な気分を味わなきゃいけねえんだよ!!!
『え?じゃあなの?優しぃ〜く、おじょぉちゃぁんだいじょぉぶでちゅかぁ〜?とでも、言やいいのか?』
「やめろぉお!!ほんっっきでさむけがするわぁッツ!!!」
いっきに、ぞぞぞわぁあと立った鳥肌がよくわかる。
いい歳したおっさんが、猫なで声出すな!!!おぞましさしか感じんわ!!
一気に吹き出したいやぁな汗と、いやぁな動悸が実に体の拒絶反応を知らしめてくれる。
…ああ…早く…此奴らとの契約期限よこぉおいぃいいッツ!!!アタシの胃がストレスで溶けるまでにぃいいぃいッツ!!!!
『現状報告ぅ〜。ターゲットはなにやら忙しそうに書類をまとめておりました。また会議でもあるんじゃねえかと、推測。』
「へえ、お前にしては珍しいまともな報告…」
『by新八くんより。』
「一瞬でも、貴様をまともだと思ったワタシが馬鹿だったよ」
『え〜なにかなぁあ?ボクがまるで普通じゃないみたいな…』
「貴様が普通だったらこの世の奴ら全て、神様だよ、神様、ゴッドだよ、ゴッド。」
『なに?お前神様なの?だったら俺の慢性貧乏性を直して…』
「働けい、貧乏。できんかったら、ナメクジのように粘液でも滴らせながら塩かけられて死ね。」
『なんつーこというんだよッツ!!お前は!!仮にも俺年上、お前年下!分かる!?年上は敬いなさいって小学校で習わなかった!?もお!そんなこと分からないおこちゃまは幼稚園でお昼寝でもしてらっしゃいッツ!!』
「うせぇええぇえっつ!!年上年下関係以前に!!てめぇとアタシはご主人様と奴隷だ!分かってるか!?奴隷!!!」
『奴…ッツ!?はぁああぁああッツ!?ふっざけんじゃねぇーよッツ!!明らかに関係変わってるよ!!依頼主と仕事人じゃなかったの!?』
「貴様を並の人間扱いすることは永遠にないと思えぇえぇええ!!!!!」
あぁああ!!!此奴は同じ人間とは思えぇえん!!どうゆう思考をしてんだよ!!!アタシの記憶違いじゃない限りこんな人間見たことも聞いたこともなかったよ!!!
『で、まあ。そっちはどうなのよ。』
「はぃ?んん…普通。」
突然まともな質問が来た、どう答えて良いかわからんな、この状況。普通としか良いようないな。
『だいたい、後一日と半分だな。』
「ああ、そうだな?」
意味のわからんやっちゃ。何が言いたいんだ此奴は?
『お前のするべき事は終わったか?』
「ッツ!?」
一瞬見られてるのかと思って、辺りを見回す。
と、言ってもアタシは別に戦士でも何でもないから分かるわけないんだけど…。
此奴は本当に意味がわからん、阿呆名発言をすると思ったら、突然、予想もしないような発言をする。
やっぱ、三太夫と似てる。そう言えばあいつは、元侍だったな。ん?つうことは、あの銀髪ヤロウも元侍か…!?
…ま、侍なんて人種は、アタシが生まれる頃には特権も何もかも、天人に取り上げられて、今は名前だけのそんざいになりさがっちまったそうだが、…いるんだな…捜せば…ううん…アタシはレアモンに当たったのか。
『ま、そんなことは良いけど、依頼料の方は…』
ぶつっ。
前言撤回…!!!此奴は唯の阿呆だ!!そうとしか考えられん!!!
アタシは、携帯を砕かんばかりに強く握りしめた。
けど…、面白い奴だな…。